☆いい女☆で行こう!

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封建制と「サムライ」に対する幻想2
とえばあなたが「サムライ」だったとする、するとあなたは子供のとき、たぶん十歳ぐらいだろうか、「あなたももう、子供じゃないんだから、町人の子と口をきいてはいけません」みたいなことを母親から言われる、「えっ?」とあなたは驚く。
寺子屋みたいなところにも通うが、父親から、「お前は武士の子なのだから、読み書きは習っていいが、そろばんは習わなくていい、あれは商人の子が学ぶものだから」と言われる。
夜更けになってから、母親がこっそり豆腐を買いに出かける、「昼間に買いに行けばいいのに」とあなたは思う、けれどなぜか言い出しにくい雰囲気だ、何か聞いてはいけない感じがする/あとになってあなたはそれを、「武士の家なのに中間(ちゅうげん)もいないのかよ」と人に笑われるからだと知る(※中間とは小間使いのこと)、子供のころからあなたの暮らしはけっこう貧乏なのを、なんとなく周囲との比較で気づいている、「お豆腐が食べられるなんてぜいたくなことなのよ」「お父さんが大小を差して歩いているのは名誉なことなのよ」と教えられる、家系図を見せるときだけ父親がやけにイキイキするということがあなたは内心でよくわからず首をかしげている。
あなたはそれなりの塾や剣術道場に通わされる、が、どうも塾の先生も論語がそんなにわかっている様子ではなく、けっきょくは毎回同じ口調で「忠孝」のお説教を聞かされるだけだった、剣術道場は「えい・やー」と無気力な運動をさせられるし、門下生は五人しかいない/元服に向けて刀をそろえ、いちおう裃(かみしも)も用意しなくてはならないということで、父親は商人のところにお金を借りに行く、父親は店の前までは威張っていたが、ふと建屋の窓をのぞき込むと、父は商人に対してペコペコ頭を下げていた、けれども建屋から出てきた父は再び路上で威張っていた。

髪を結われて裃を着せられ、父親の勤め先に連れてゆかれる、いろんな人に挨拶をさせられる、父はこの河原沿いの建物で荷役の検分をしているらしい、ひとつひとつを帳面に記録し、船頭や荷役人にいちいち「よし」と威張ると、よしと言われた側はヘヘェと恐縮しっぱなしだった。
そこに、駕籠に乗った上役がやってくると、父親は作業を放り出し、また他の職員も作業を放り出して立ち上がり、駕籠から下りてくる上役を出迎えた、その偉そうな人が「お役目ご苦労」と言うと父親は「ははっ」と頭をさげて、さげたままそれを上げない、あなたも慌ててそれに倣った、「万事遺漏ないか」と言われると父親はまた「ははっ」と言った、ひととおり調所を見て回った上役がふたたび駕籠に乗って去っていくまで父は頭をさげたまま顔をあげなかった。
河に橋が架けられることになった、その作業に父も駆り出されることになり、あなたは父親がとつぜん土木作業も始めるのが不思議だった、そして父の土木作業は、後で集まってきた工事のおじさんたちの屈強なはたらきぶりに比べていかにも貧弱で手際が悪く、どうしていいものかわかっていないヨタヨタのものだった、屈強な工事のおじさんたちにはみんな刺青が入っていた、そこに馬に乗った上役がやってくると、父親は駆け寄って馬上の上役から指図を受け、何事かを指摘されるたびに「面目ございません」「ただちに」と謝罪していた。
あなたは帰り道、ふと気になっていたことを父親に訊いてみた、「なぜこの河のあそこに橋を架けるの? あっちのほうが人通りが多いし、川幅も狭いし、雨が降ったときもあっちのほうが流れは緩やかだよ」、その河原はあなたが子供のころから遊んでいた河原だったからあなたはそのことをよく知っていた/それを口にしたとたん、父親はギョッとして、左右を見渡し、直接あなたの口元を塞ぐほどの勢いで、「こら、二度と、そんなことを口にしてはいけない。ご政道を批判するつもりか」とあなたに言いつけた、父親の眼球にはこれまでに見たこともない怯えの色が浮かんでいた、そのときあなたは、自分の父親がこの怯えによって、場合によってはいくらでも自分のことを家から放り出すのだということを直観的に知った。

これが「サムライ」だ。

あなたは長男で、兄弟に次男と三男がいたが、次男は十一歳のときに他家に養子に出された、やがてはその他家の跡継ぎになるらしい、三男はどうなるのかと聞くと、「お前がこのまま、当家の跡取りになれればいいが、万が一病気や何かで死んでしまうこともある、そのときは跡継ぎがいなくなってしまうだろう?」と説明された、三男はつまり跡継ぎの「予備」だった、だから三男は寺子屋にも通わされていない/あなたは一念発起して中央の藩校とその付属道場で住み込みになって学門と剣術修行をすることにした、あなたはわずかながら青春を体験した、そうして親元を離れて半年後、手紙が来て「縁談が決まったから戻ってきなさい」という……帰宅すればそのままただちに祝言が催される運びのようだった、あなたは自分の娶るお嫁さんがどんな女性なのか見たこともないし一言も聞かされていない。
これが「サムライ」のスタンダードなのであって、現代のわれわれが何をもって「サムライジャパン」みたいなことを言っているのかまったく不明だ、ある意味サムライジャパンというなら確かにこのサムライジャパンは現代まで続いているだろうよ/あるとき父親があなたの袖をぐいと引っ張り、勤め先の同僚について、「〇〇とは言葉を交わすな、目も合わすな」と言いつけた、「何があったの」と訊くと「先日の大雨で橋が崩れたことに、工事不全としてお咎めの沙汰があるらしい」と父親は言った、あなたが勤め先に行くと、あなたがとぼけてその人に目も合わさないようにしているように、他の誰もその人に目を合わさないようになっていた、やがてその人は勤め先からいなくなり、のちに聞くところ獄に入れられ、獄内で流行っていたコレラに感染して治療を受けられず獄死したそうだ、勤め先では彼の獄死について一言でも触れる人は誰もいなかった、この役人たちの光景がサムライであってサムライというのはまったくソルジャーのことを指してはいない。
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